アメリカでは一時期ホットソースブームのような時期があり(今も?)、スーパーのソース売り場には何十種類というホットソースが並ぶ。日本でもおなじみのタバスコでも、クラシックな赤のものもあれば緑色の唐辛子を使ったものや、ちょっとスモーク風のもの、激辛のもの等々、大中小のボトルがたくさん出回っている。スパイス好きのうちの夫も、物珍しいもの好きの私も、アメリカで売られているかなりの数のホットソースを試してきたけれど、ここ数年必ずうちの冷蔵庫に常備されているのがこの4種類。タバスコ、クリスタル、シラチャ、そしてタパティオ。
うちの冷蔵庫にあるこれらの4種類のソースは、偶然に重なったわけではなく、それぞれ用途がはっきりと決まっている。特に夫(アメリカ人)は、何でも好き嫌いなく食べるし、食に関してはかなりオープンマインドなのだが、ホットソースの使い方にはかなりのこだわりがあるらしい。「この料理にはこのソース」というこだわりは妥協できるものでないそうで、なのでこの4種類は常に我が家には揃っていなくてはいけない。
まずはお馴染みのタバスコ。一時期、いろいろソースを試したり、タバスコも新種のものをトライしたりした時期もあったが、「やっぱりこのオリジナルの味が必要」ということでこれは必ず大瓶が家にある。(というか、どのソースもうちは大瓶で購入。)ピザやトマトソースやミートソースのパスタには、いくら凝ったソースであったりグルメなピザであっても「う~ん、どうしてもタバスコかけたい・・・。」と思ってしまうことのある夫と私。でもこれ、日本で育った同年代の方には共感してもらえる思いなのではないだろうか。だって、イタリアンレストランのテーブルには、かつて必ずおいてあったでしょ、このタバスコが。アメリカ南部はルイジアナ州生まれのこのタバスコが、なぜイタリア料理と結びつくのかはわからないけれど。今でこそ本格的なイタリア料理がどこでも食べられる時代になったが、一昔前はイタリアンといえば数種類のスパゲッティーが主流で、それにタバスコをかけるのが通という時代だったんだもの。(どんな、いつの時代だって~?え、でもみんなしてましたよね??)なので、家ではトマトソースとピザにはタバスコ。
次は、これまたアメリカ南部ルイジアナ州生まれのタバスコとライバル的なホットソース、クリスタル。これは夫が大好きなソース。原材料はタバスコと同じでレッドペッパーと酢と塩のみ。なのに少し味が違うのが、両社ともこだわりを持って作り続ける独自のレシピがあるのだろう。このクリスタルソースもアメリカではタバスコに次いで一般的なルイジアナ発のホットソース。私はかつて「ちょっと水っぽい?」と思っていたのだが、その理由はきっとビネガーの酸味。タバスコ独特の風味ではなく、どちらかというとあっさりした辛さ。うちでは、ガンボやジャンバラヤなどのケイジャン料理やポークチョップなどのお肉料理を作ったときに夫が必ずかけたくなるソースがこれ。
続きましては、アジア系の代表的なホットソース、シラチャソース。アメリカのタイやベトナム料理店のテーブルには必ずおいてあるソース。もともとはタイ料理で使われているソースらしいが、このブランドのシラチャソースはメードインカリフォルニア。ベトナム系移民であるオーナーがHuy Fong Foodsという会社を作り、ベトナムで作っていたのと同じ手法で手作りのホットソースを作り始めたのが1980年のこと。それから、一世風靡をするといっても過言でないくらい、今では全米に広がり世界中に輸出されるまでのブランドになったアメリカンドリームのような話。このソース、ただ辛いだけでなくちょっと甘みがあってニンニクの風味もきいていて、ソースと言うよりは辛味ペーストとでもいうようなお味。タイ料理やベトナム料理が大好きな我が家では、アジアン系の料理に辛味を足したいときはこのソース。最近では、餃子やシュウマイなんかにも醤油と酢と一緒に混ぜてディッピングソースにして食べたりもする。なので、家で食べるアジア系料理には欠かせないのがこのシラチャソース。
そして最後は、これまたカリフォルニア発のサクセスストーリーで今年40周年を迎えるタパティオソース。メキシコ人らしい帽子をかぶったおじさんの顔が目印のラベル付きのこのボトルは、アメリカのメキシコ料理店のテーブルには必ずおいてあるソース。店でオリジナルのホットソースを出しているレストランでさえ、指定すれば必ずといっていいほど出てくるくらいみんなが好きなタパティオ。テイクアウトやファーストフードのメキシコ料理店では、持ち帰り用のケチャップと同じ小さいミニサイズのタパティオソースもあるくらい。家庭料理としても我が家で頻繁に登場するメキシカン。そして、ここサンディエゴでは気軽にテイクアウトして持ち帰って食べることも多い、ブリトーやタコス。そんなメキシコ料理に欠かせないのがこのタパティオソース。
ここにあげた4種類のソースは、どれもアメリカではとても一般的なホットソース。この他にも、本当にたくさんの種類のホットソースが出ていて、ホットソース専門店なんかもあるくらい。アメリカ人も辛いものが好きなのか、辛いものが好きな中南米やアジア系の移民が増えてきたということなのか。うちでは、この4種は定番。それプラス、世界一辛い唐辛子であるスコッチボネット(ハバネロ)を使ったソースや、新種のおもしろそうなソースを見るとついついトライしてしまったり。ホットソース一つにしても、アメリカの食べ物もまだまだ奥が深い!